ストライプは、毛虫の柱に入った途端、大きなショックを受けました。
四方八方から押され、けられ、ふみつけられたのです。
もう、仲間だなんて言ってられません。
――おとしたりじゃましたりするやつらなのです。
そいつらを、登るための踏み台にし、足がかりにして、ストライプは登っていきました。

このがむしゃらなやり方がうまくいって、ストライプは、ずいぶん高い所まで登ったような気がしました。

しかし、それから何日間かは、自分の場所にしがみついているだけで精いっぱい、という思いでした。
そんな日には、とくに、心の中を、ふと不安の影がよぎります。
「あの頂上に、いったい何があるんだろう?」
と、その影はささやきます。
「どこへ行こうとしてるんだろう?」

そのつぶやきに、イライラが募り、ある日、ストライプは、もうがまんできなくなりました。
ついに声に出して、どなり返しました。

「ぼくにはわからない。
でも、考えるひまがないんだ!」

* * *

ストライプは、ほかの毛虫たちには、ただ、"きたえられてる"と、見えるだけではありません。
――冷酷なようにも見えます。
柱を登る者たちの中でも、彼はとくべつ変わっています。
しかし自分では、だれにも逆らっているつもりはありません。
頂上にたどり着くと決めたからには、
当然なことをしているにすぎないのです。

* * *

こんなに高く登ってきたというのに、少しも高くならないなんて!
下から見上げたときだけ、りっぱに見えただけなんて。



* * *



「ぼくは上まで行ってきたけど、上には何もなかったよ」

* * *

「そんなこと、たとえ本当だとしても、言わないでくれよ。

登っていく以外に。
何ができるというんだ?」



――トリーナ・ポーラス 『ぼくらの未来』



05.10.19







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