申し訳ないと思ったのだが、眠れないんだ、と呟きながら、ファンゴは彼の肩を揺さぶった。
んん、と声が漏れて、彼が眼を開けたのが判った。 慣れない旅に加えて過酷な魔物の戦い、急激な環境の変化にぎりぎりで耐えている彼はこんな安ホテルのベッドでさえ、いつもぐっすりと眠り込んでいた。
疲れ果てているに違いないのに、暗闇の中でファンゴの顔を認めた彼は、そんな時でさえ優しく上品に微笑んでくれた。(彼はとても礼儀正しく上品な人に育てられた)
「どうした?」
穏やかな微笑と声にほっとしたファンゴは、眠れないんだ、ともう一度小さく呟いた。
すまない、起こしてしまって。その、…どうしても眠れなくて。
ここ数日、ファンゴは毎晩なかなか寝付かれなかった。
何とか眠ろうと努力しても、完全に眠りに落ちるまで数時間かかり、必ず途中で数回目が覚める。 昨日などはやっと眠りについたのが明け方で、殆ど眠れてないにも拘らず、今もファンゴは暗闇の中で独り苦しんでいたのだった。 人間である彼のように頻繁に休息する必要がないとはいえ、戦闘と睡眠不足からくる疲労は確実にファンゴを押し潰そうとしていた。
緩慢であるがその状態で最高の速さですぐに身を起こし、彼は枕元の灯りを点けた。その僅かな光だけでもファンゴは幾分安堵する。
「ちょっと待っていろ」
ベッドを軋ませ、彼は床に足を下ろした。スリッパを履いて歩き出そうとした彼が一瞬ふらついた様を見れば、やはり疲労が濃厚であるのは明らかだった。ファンゴは再び申し訳なく思う。ファンゴより彼の方が疲れきっているに違いないのに。
(どうしてアドラーはこんなに強いんだろう)
初めて会った時は女性かと思ってしまったほど華奢で繊細そうに見えた彼は、それなのにとても強かった。喧嘩や腕力が、という訳ではなく、彼は心が強い人だった。どんな状況の中でも決して弱音を吐いたりしない。だからファンゴは安心して戦えていた。
パタパタとスリッパの移動する音が聞こえる。夜中だから他の宿泊客に気遣っているのだろう、その足音はとても静かだ。
彼は冷蔵庫を覗き込み、何か取り出した。マグカップに注がれたそれの匂いを嗅ぎとり、ミルクかな、と思う。数日前に一緒に買いに行った食料品の中の一つだ。 それからそのカップを持ってきょろきょろと辺りを見回していた彼は、小瓶も一緒に手に持って、またパタパタとファンゴの所に戻ってきた。少し困ったように笑いながら、カップを指差す。
「すまない、ファンゴ。これを炎で温めてくれないか、ピアニッシモでいいから」
幼少時から音楽を習ってきたと言う彼は、日常生活でもしばしば音楽用語を使う事がある。(殆ど無意識的で、半ば習慣になっているようだ) 戦闘においても攻撃力の強弱などをそれで指示する事が多いので、ファンゴも少しずつ解る様になっていた。
"ピアニッシモ"は、とても弱く。
「ガデュウ」
ベッドサイドに置かれた本に手を置き、彼が呪文を唱える。ぼんやりと弱い光がその場を照らし出した。 彼が美しい歌で魔法の本に光を灯せば、ファンゴの手からは炎が咲き出でる。その炎を彼が手にしているカップに翳した。(ファンゴは元々炎のコントロールに秀でていて、彼の手に火傷を負わせてしまう様な事は決してなかった)
「よし有難う。さあ、これをお飲み」
彼はファンゴにベッドに座るよう促し、自身もその隣に腰掛けた。一緒に持ってきた小瓶から砂糖を数杯カップに入れ、ファンゴに差し出す。ファンゴは自らの炎で温められたカップを両手で持ち、数秒、その柔らかな白を見つめていて、カップにそっと口を付けた。 安心できる甘さ、そして温もりが口の中を満たし、それはやがてファンゴの体中を包み込んだ。
…おいしい。
「眠れない時はお砂糖たっぷりのホットミルクが一番さ。僕も昔、母によく作って貰ったんだ」
彼の母。館に滞在しているほんの少しの間であったが、ファンゴも何度か顔をあわせた事があった。
上品で礼儀正しく、優しい人。彼と面影のよく似た、白百合の様な美しい人。けれど一日の殆どをバルコニーの揺り椅子に座っている人。いつもどこか寂しげな人。"涙の日"を、歌う人。
アドラーの母さんは、アドラーが小さな頃からあんな悲しい歌を歌っていたのか?
彼の私事に無遠慮に踏み込むとか、そういうつもりはなく本当に何の気なしに疑問が口をついて出た。けれどそれは、彼の形の整った美しい眉を僅かに歪ませてしまった。
「いや…ああ、まあそうなんだが、でも、…母は他にも沢山歌を教えてくれたよ、僕が眠る時は子守唄も歌ってくれた、けれど彼女は――いつでもドロローソに歌う人だ」
彼はフッと悲しそうに微笑んだ。
「きっと昔は今の様にではなく、表情豊かに素晴らしい笑顔で歌う女性だったのだと思うよ。彼女は生れて初めて好きになった男性――僕の父をとても愛していた。深く、深く、この世の何よりも愛していた、それはコン・フォーコに。だから彼女はもうずっと悲しみの中で生きる様になったんだ、父が亡くなって以来」
ファンゴは僅かに身動ぎした。そうか、アドラーの父さんは死んでいたのか。あの家には彼の父親らしき人間を見かけた事がなくて、それを疑問に思っても何となく尋ねる事が躊躇われていたのだった。
「僕も少しでいいから父との思い出がほしかったんだが。彼は僕が生れる前に亡くなってしまったから」
えっ、とファンゴは思わず声を出した。
父親の記憶がない。まさか、と思った。彼がこんなにも強いのは、きっと彼の父も強い人間であったからなのだろうと、ずっとそう考えていたのだ。ファンゴの"強さの目標"は、ファンゴ自身の父親だ。同じ一族や他種族にも強い者は沢山いる、しかしやはり一番の目標となるのは、誰より身近でずっとその姿を見てきた父なのだ。だから彼も、きっとそうなのだろうと思っていたのに。
じゃあ、どうしてアドラーはそんなに強いんだ?
彼はぽかんとした様だった。
「え、何だって、…僕が?強いって、ファンゴ?」
そうだ、だってオレは、こんな風に眠れなくなったりして――情けない奴だろう、でもアドラーは違う。人間なのに怯えたりしていない、いつもしっかりと立っているじゃないか。
彼は口元に手を当て、躊躇いがちに一つ一つ言葉を紡いだ。
「ええと、違うぞファンゴ、それは情けない事なんかじゃない、当たり前の事だ。僕が強い?いや、そうか、…その」
彼はそこでふぅと息を吐き、言葉を区切った。
「…僕は幼い頃からずっと母を守りたいと思っていた。ああいう女性は、必ず誰かが守らなくてはいけないんだ。そう、父の代わりになれたらと思って、強くなりたいと思い続けていた、そうなれるように色々な事を学び続けた。そしてお前と会って、お前こそが――僕がずっと思い描き続けていた"強き者"だったんだ。だからそのお前に、そんな事を言って貰えるなんてな…驚いた」
どうやらまた彼を悲しませる様な事を言ってしまった訳ではないようだったので、ファンゴは良かったと安堵した。彼の悲しい顔は見たくない。
彼に付き合わせるのも悪いと思って急いでミルクを飲んでしまおうとしていたファンゴに、彼は微笑みかけた。
「急がなくて構わない、ゆっくりで良いからそれを飲みなさい。飲み終えるまで何か話でもしていようか、"勉強"の続き――いや、こんな夜に勉強はないな」
彼は笑った。
彼はファンゴに本当に色々な事を教えてくれる。
人間の世界にも王はいる、過去にも現在にも、その王達について自分が今まで書物等から学んできた知識、王になる為にはそれもファンゴに必要なのだと。二人はその時間を"勉強"と呼んでいた。
――ファンゴ、王になる為には強くなくてはいけない。力だけが強い王、それはただの暴君だ、正しき王者は力のみならず、心が強くなくてはいけない。
――心が強い?…それは、強い呪文が出せるという事か?
彼の言葉がよく理解できなかったファンゴは、強力な呪文を出す為には強い心の力が必要となる"本"の事を、彼が話しているのだと思ってしまった。彼は笑った。
――恐怖に負けない、誘惑に惑わされない、悲しみに耐えられる、そして誰かの事を考えられて、誰かの痛みを受け止められる。これが僕の考える強い心だ。少しずつ教えていくよ。
――負けてはいけない誘惑は、力の誘惑だ。権力、財力、軍事力…沢山の力、そういうあまりにも強大な力を目の前に差し出された時、正しい未来を見失ってはいけない。目前にある欲望の力よりも、その先にある大事な未来を見据えるんだ。
――優しい事と強い事はほぼ同等だ。王は民衆あってこその王、他の人間の事をないがしろにしてはならない、常に自分以外の者の事も考えられるようでなくてはいけない。誰かの事を思える、これが重要だ。
――だけど…時に王は感情を捨てなければいけない事もある。
――ファンゴ、一を捨てて百を救う、この意味が解るかい。
少し考えて、首を振った。
――大勢の者を救う為に、一部の人間を犠牲にするって事だ。
――どうして。
――最小限の犠牲で、他の全員を救う為に。そういう決断も、王は下さなければならない時がある。
――嫌だ、そんなの。例え沢山の者を生かす事が出来ても、その少しの者を殺さなければいけないんだろう。一も百も全員救いたい、それが強い王ではないのか。
毅然とした表情で答えるファンゴに、彼は嬉しそうに微笑んだ。
――そう…そうだ、ファンゴ。一も百も救うには、何よりも知恵が必要だぞ。色々な事を学ばなければな、憶える事は山ほどある、頑張らないとね。
穏やかに言った彼は、しかし悲しそうに顔を曇らせた。
――だけど、世の中にはどうしようもならない事が、何故だか本当に沢山ある。いつかお前がこの決断を下さなければいけない時が来るかもしれない。王というのは、そういうものだ――…
「僕はこの本にとてもよく似た色の花を知っている」
少しずつミルクを飲むファンゴの隣の彼は、ベッドサイドに置かれている優しい赤をした本にそっと触れた。
「ヨーロッパでは最も日常的で人々に愛されている、可憐な花。家々の窓辺を飾るといえば、殆どがその花なんだ。――そう、母もその花を飾っている。彼女と父の、思い出の花なのだと」
あの花だろうか。彼の母の美しい横顔が、バルコニーで風に揺れる無数の小さな赤い花を、酷く悲しげに見つめている姿をドアの隙間から見た時がある。そう、確かにファンゴの本とよく似た色の花だった。
「その花の数多くある花言葉、尊敬と信頼、愛情、決意、安楽、…追憶、友情、そして僕が一番好きな花言葉」
言葉を区切り、彼はファンゴの肩に細い腕を回した。彼はお日様のように温かい。彼とミルク、二つの温もりにファンゴは包まれた。
「君ありて幸福」
素敵だろう、と彼は言った。
「母の好きな花だし、僕も昔からいつも見ていたからな。だから僕はお前の術を初めて見た時、お前が手からその花を咲かせたのかと思ったのさ、ふふ」
オレの炎が?花みたいだなんて初めて言われたな。
花は小さくて弱くて、そして綺麗なものだ。そうだ、彼はずっとファンゴの炎を美しいと言ってくれている。ファンゴに相応しい、強く優しく美しい炎だと。
「ファンゴ、お前が眠れないのは今日だけかい?」
…いや、……最近、ずっとだ。
「原因は何故だと思う?」
ファンゴはじっと手の中のミルクを見詰め、この戦いの所為だと思う、と漏らした。
魔界から急に人間界へ来て、そういう環境の変化の所為もあるとは思うが…やっぱり、一番の原因はこの戦いなんだ。正直、辛くもある。王候補に選ばれておいて、情けないよな、オレは。
ファンゴを抱く彼の腕に少し力が入った。
「辛いのは、何故?」
…全員が、敵だという事。数日前に戦った魔物、あいつも友達だったと言ったろう、仕方ないとは解ってるんだ、これが王を決める戦いなんだから。だけど、友達を傷つけなければいけないのも、何より、友達が…皆が、オレを敵だと、邪魔な奴だと認めたギラギラした眼で見てくるのが――辛いんだ。
溜め込まれていた思いをファンゴは吐き出した。もう嫌だ、もうあんな眼は見たくない、見られたくない。自分もあんな眼を、しているのだろうか。
「ファンゴ。僕はさっきも言ったな、それは情けない事なんかじゃないと。当たり前だ。お前達みたいな小さな子が、友達同士で戦わなくてはならないんだ、誰だってお前と同じさ。…だが」
いつでも穏やかで歌声のような彼の声が厳しくなる。
「王というのは、そういうものなんだ。数多の存在を踏みつけて頂点に立つ、それが王だ。辛くともそれをきちんと見詰めなければならない」
ファンゴの表情が強張る。カップを持つ手が僅かに震えた。
「重いだろう、王になる者は、ファンゴ、とても重いものを背負わなければいけないんだ。それでも立ち続けていられる者が王なのさ」
でも、と、彼の声がまたいつもの歌うように穏やかなものに戻ったので、それだけでファンゴは随分安心できてしまうのだった。
「君達がその重みに押し潰されてしまわぬ様に、僕達パートナーがいるんだろうな」
その柔らかな歌声を聞いた時だった。
突然、ファンゴは、自分を潰そうとしていた何かから、もうすっかり解放された事を感じたのだ。
ホットミルクは酷い疲労を、そして彼の言葉は全ての苦痛を取り除いてくれた。そうだ、自分には彼がいるではないか。これは真実孤独な戦いではない、唯一無二の存在であるパートナーが、いつも隣にいてくれる。
…有難う、アドラー。……有難う。
そう繰り返すファンゴを彼は益々強く抱き寄せてくれた。大丈夫、という風に肩をさする。
「正しくあればいいんだ、ファンゴ。憎悪を以て他の魔物を倒さなければいい。今は周りの全てが敵であっても、お前が正しく王になれば、やがて皆が自然とついて来てくれる様になるのだから」
きっと王になれる。彼がパートナーであれば、必ずなれるだろうとファンゴは思う。
ミルクを飲み終えたファンゴと一緒のベッドに入り、彼はお母さんのように優しくファンゴの緋色の髪を撫でた。何だかくすぐったくて、まるで小さな子の様で少し気恥ずかしくもあったのだが、ファンゴは彼にこうして貰うのが好きだった。
「さ、お眠り。大丈夫、今度はきっと眠れるさ。お前が寝付けるまで僕は子守唄を歌ってる」
美しい、優しい歌声。
その懐かしい音に包まれて、ファンゴは久しぶりに安らぎの暗闇へと落ちて行けたのだった。




少し時間をくれ、そう言うとその誘いを持ちかけてきた者は、良い返事を期待している、と言ってパートナーの人間と共に姿を消した。
ファンゴは黙って彼らの消えて行った方角を見詰めていた。ファンゴ、と背中から彼に呼ばれる。
「どうする」
彼はいつも、まずファンゴ自身の意思を聞いてくれる。
ファンゴは腕を組んでじっと考え込んでいて、やがて、行こうと呟いた。
今の奴らの話を聞いただろう、とんでもない力を持っているんだ…そのファウードというものは。
「ああ」
封印を解く為にオレ達の力は貸す。だがそれは、そのリオウとやらの為じゃない。――こういう時は外から攻め入るよりも、内に潜り込んでからの方が崩し易い。トロイアの木馬、だったな?
よく憶えてたな、と彼は嬉しそうに頷いた。ファンゴは彼から得た知識を確実に吸収している。
声をかけた魔物は他にも何組もいると言っていた…そいつらだって、きっとただ協力するだけじゃないだろう。全てはファウードへ行ってみてからだが。
ファンゴは彼を振り返った。
アドラー、これが前に言っていた、"力"の誘惑、だろう?
世界をも手中に収められるほどの、圧倒的に強大な力。ファウードとは、そういうものだと言う。誰もがその力を求めるだろう。目前にある、欲望の力。
憶えているさ、その先にある正しい未来を見失ってはいけない――オレは絶対に見失わない。だから、最後までついてきて欲しい。
彼の眼を見詰め、ファンゴは毅然として言った。
ファンゴが何より安心できる微笑みで、彼も応えてくれた。
「当然だ。何があろうとついて行く」
王になる為にここまで来た。
共に王者になろうと、誓った。
そうなった時も必ず隣にいてくれるであろう彼の姿を、その時ファンゴは確かに見詰めていたのだった。




やさしいうたがきこえる。
そのうたはじょじょにちかづいて、また遠ざかって行く。
ファンゴはどくどくと熱い血の流れを感じていた。ゴツゴツとした硬く冷たい岩の感触があるが、ファンゴの意識はそちらには向いていない。
侵入者を倒さなくては。
どこまでも広がる空に、血が流れ出る頬を撫ぜて行く風。懐かしい故郷の地面にファンゴは倒れていた。
荒い呼吸を繰り返し、ファンゴは起き上がろうとしている。
あいつらを消すんだ、消さなくては。ファウードを守るんだ。…
やさしいうたがきこえる。
酷い頭痛がして、ファンゴは呻く。
だれかがうたをうたっている。
ハァ、と血の味がする口を開ける。痛い。頭の中に黒い靄の様なものがかかって、その先のものが見えない。
やさしいうただ。だれかがうたっている。だれがうたっているのだろう。ちがう、うたなどどうでも良いのだ、早く早く、奴らを消すのだ。この力を失いたくない、嫌だ、誰にも邪魔などさせはしない。
ファンゴは硬い地面に手をついて、ようやく体を起こした。体中に激痛が走ったが、それすら今のファンゴにとってはどうでも良い事であったのだ。ファウードを守る、それが何よりも大事な事で、自分はその為にあるのだ。
歌がまた近づいてくる。やめてくれ、何なんだ、このうたは。そのむこうにうつくしいひとのほほえんだかおがみえる。
やさしいうたがきこえる。
やさしいうたがきこえる。
ファンゴは両手で頭を押さえつけた。痛い、痛い、痛い、痛い。やさしいうたがきこえる。喉から悲鳴が漏れる。だれかがうたをうたっている。あいつらを倒すんだ、憎くて憎くて堪らない、あいつらを早く、うたがきこえる、きえろ、灰になれ全部焼き尽くしてやる、さあ、――……
誰を呼ぼうとしたのだ?
今、誰かの名前を呼ぶ筈だった。
目の前の景色が蜃気楼の様に揺らめく。何か大切な、酷く大切な事をわすれているきがする。頭が痛い。とおいところにあのひとをおいてきてしまった。うたっているだれか。それは、なによりもだいじなひとだったようにおもうのに。
頭に激痛が走り、ファンゴは声を上げて再び地面に倒れ伏した。
あいつらを倒さなくては…消すのだ、早く…
体の痛みはとうに感じていなかった。どこか遠いところでたいせつなだれかがやさしいうたをうたっていた。
横たわるファンゴは自分の頬を涙が伝っている事に、ついに気付きはしなかった。
もう一度、あの歌が聞きたかった。






寒い夜にホットミルク飲んでる時にふっと浮かんだ話。だからこれ書き始めたの去年の冬辺りですねおっせー!
ああでもダラダラしてたお陰でその間に本の色判ったからいいか!
的確な理由を言葉にしてまとめられないので結論だけ述べますが、すぐにではなくてもゴデュファの力はいずれ解けると思うんですけど、元に戻った時にゴデュファ中の記憶はあるんでしょうか…他の皆はバッチリあるでしょうけどファンゴぐらい人格丸ごと変わってるとどうなのかなーと。憶えてても憶えてなくても、ファンゴにとっては凄く辛い事に思いますウウウ…(TT)

06.7.27



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